夏目漱石 こころ
田舎者は都会のものより、かえって悪い位なものです。それから、君は今、君の親戚なぞの中にこれといって、悪い人間はいないようだといいましたね。しかし悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型にいれたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。だから油断が出来ないんです。
--夏目漱石 こころ
あせってはいけません。
ただ、牛のように、図々しく進んでいくのが大事です。
(...)
牛は超然として押していくのです。
何を押すのか聞くなら申します。 人間を押すのです。文士を押すのではありません。
--夏目が芥川に送った書簡に記した言葉