A Book Lover's Passion and Calmness

Forget time and immerse in one's inner self. 時間を忘れ、内面に浸る。--シン

夏目漱石 道草

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今日、道草を再読した。夏目漱石の自伝的作品と言われているらしい。

気に入ったところを引用してみる:

彼が遠い所から持って来た書物の箱をこの六畳の中で開けた時、彼は山のような洋書の裡に胡坐をかいて、一週間も二週間も暮らしていた。そうして何でも手に触れるものを片端から取り上げては二、三頁ずつ読んだ。それがため肝心の書斎の整理は何時まで経っても片付かなかった。

(…)

自然の勢い彼は社交を避けなければならなかった。人間をも避けなければならなかった。彼の頭と活字との交渉が複雑になればなるほど、人としての彼は孤独に陥らなければならなかった。彼は朧気にその淋しさを感ずる場合さえあった。けれども一方ではまた心の底に異様の熱塊があるという自信を持っていた。だから索寞たる曠野の方角へ向けて生活の路を歩いて行きながら、それがかえって本来だとばかり心得ていた。温かい人間の血を枯らしに行くのだとは決して思わなかった。